▍モグサのはなし

 

お灸に使われる「モグサ」はキク科の多年草「ヨモギ」からつくられます。草餅、ヨモギ餅に入っている、あのヨモギです。ヨモギの葉裏に生えている銀白色の綿毛がモグサとなります。

 

春から初夏にかけての時期に採取し天日干ししたヨモギを80℃以上の火力で乾燥させ、次に石臼で挽いてフルイにかけ、葉肉と綿毛とを分離させます。さらにそれを「唐箕(とうみ)」という選別機に仕込み細かな不純物を取り除くことで、混じりけの少ない繊毛=良質なモグサがつくられていくのです。精選度を極めたモグサは、原料対比わずか3%という貴重なものになります。

 

 

 

 

モグサの燃焼温度は平均約60℃。他の物質に比べ非常に低温度です。しかも精選度の高い良質なモグサほど燃焼温度が低く、また燃焼時間も短くなります(火付きがよくすぐ燃え尽きる)。揮発性の油を多く含むため香気が高いのも良質なモグサの特長です。

 

一般的に、皮膚に直接施灸する「直接灸(点灸)」には純度の高いモグサを使用し、皮膚と灸の間に何かをはさむ「隔物灸」の場合は、火持ちをよくするためにやや粗めのモグサを用います。

 

 枇杷葉温圧でのお灸は温灸ですが、厳選された上質なモグサを使用しています。普通の温灸モグサに比べ熱がやわらかく、それでいて消えにくい、香気も高いモグサです。

 



▍ヨモギ指して「ハーブの母」

 

モグサの原料であるヨモギは、古来より洋の東西を問わず、薬効の高い野草として人々に愛されてきました。ヨーロッパの古い伝説ではヨモギを指して「ハーブの母」とも呼んでいます。モグサの煙に含まれている香気、成分はいやし系のものなので気持ちよく心がなごみ効果をあげることができます。

 

実際に、ヨモギには数多くの有効成分が含まれています。中でも特筆すべきは「葉緑素(クロロフィル)」。葉緑素は健胃健腸、コレステロール抑制、代謝促進、殺菌・制菌、免疫力強化、抗アレルギー、脱臭など多くの作用が確認されている成分で、ヨモギの葉緑素は他の植物と比べてより強力な効果を持ち、体内での消化吸収もよいという特性を持っています。

 

ほかにA、B1、B2、Cなどの各種ビタミンや、鉄分、カルシウム、リンといったミネラルもヨモギには多量に含まれています。食物繊維も豊富で、その量はほうれん草の約10倍ともいわれています。

 

お灸の歴史は古く、紀元前1200年ごろの中国の書物にはすでに灸の原形と思われる治療法の記述が残されています。中国から日本に伝わったのは6世紀ごろと言われ、以来その療法は途絶えることなく、知恵と経験を蓄積しながら今日まで受け継がれてきました。

 

 

お灸の効能は「モグサの燃焼による温熱」と「モグサから出る有効成分」によってもたらされます。主な作用・効果は、次のとおりです。

 

 

(1)組織細胞の機能を亢進させる

 

(2)心臓や血管の収縮力を増して白血球を増加させる。灸の継続により赤血球も増加する

 

(3)リンパ球を増加させて免疫作用を高める

 

(4)血小板を増加させて止血作用を高める

 

(5)骨組織を強化して体質の改善につなげる

 

(6)血管の収縮拡張によって局所の充血、貧血を調整し、炎症をやわらげる

 

(7)鎮痛作用がある

 

(8)殺菌作用がある お灸には副作用がまったくありません。継続して行えば、自然治癒力が高まり、病気に屈しない健康なからだづくりが叶います。